2016.1.19

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千年続く歴史をちょっと意識するだけで、大きく変わるひな祭り。


3月3日の「ひな祭り」は、平安時代から現在まで、変わらずに大切にされているお祝いごとの一つです。


ひな祭りに飾られるひな人形も、ひな祭りが始まった平安時代には、紫式部の源氏物語や清少納言の枕草子に「ひいな遊び」と記されているように、腕に抱くことができるぬいぐるみのような人形だったそうですが、千年にわたって発展し続けており、それぞれの時代の人々がひな祭りにかける思いが映し出されています。



平安時代のひな祭りは、川のほとりに人々が集まり、質素な素材で作られた男女一対の人形に災厄を託して川や海に流す、現在の「流しびな」のもととなる儀式が一般的でした。


その後、時の経過とともに発達していった人形作りの技術のおかげで、紙製の人形から布製の人形が主流になっていき、「小さくてかわいらしいもの」をその当時は「ひいな」と呼んでいたことから、ひな人形を用いたお祭りとして、江戸時代には盛大な女の子のお祭りへと発展していったとされています。


ひな祭りが広まるにつれて、ひな人形は次第にその時代を映し出す豪華な装束をまとうようになり、1700年代の江戸時代には、当時の幕府から「ぜいたく」品としての製作禁令が出されるほど、庶民の間に急速に広まっていきました。現代ではおしゃれな風貌の「プリンセスひな人形」が誕生するなど、いつの時代もひな祭りには、親が娘の健康と成長への願いを込めて、よりよいものを追求し続けていることが分かります。



ひな祭りが「桃の節句」とも呼ばれるのは、もとをたどれば3世紀頃の古代中国から、季節の変わり目は気力が落ち、「悪い気」が入って体調を崩したり災いが生じやすくなるため、身を清める儀式として伝わってきたという歴史があり、悪魔を打ち払う神聖な木と考えられていた「桃の木」をひな祭りで飾るようになったことに由来しています。


桃の節句は、緑・白・ピンクの3色のひし餅にも見られ、下から緑、白、ピンクの順で「雪の下には新芽が芽吹き、桃の花が咲いている」という春の情景や、大地のエネルギーを取り入れて健やかに成長してほしいという願いを表していますが、自然への感謝や尊敬とともに、親の子供たちへの思いが祈りとしてこめられてきました。



ひなあられは、そんなひし餅を外でも食べることができるようにとひし餅を砕いて作ったという説が残されていて、今では、春の訪れを祝い、娘の無病息災を願う親心が表れた、ひな祭りの代表的な食べ物となっています。


ほかにも、れんこんやエビなど、長生きや良い未来を願う意味がある食材を使ったちらし寿司、そして、2枚の貝がら同士がぴったり重なりあい、決して他の貝と合わないハマグリの性質から、娘が相性の良い結婚相手と結ばれることを願ったハマグリのお吸い物など、娘の幸せを願う親の気持ちがひな祭りの一つ一つの食材に表れています。



また、「おひなさまを早く片付けないとお嫁に行き遅れる」といわれることからも、ひな祭りは「女の子」として大切にされていることが子供に伝わる特別な日でもあり、Web上のアンケート調査でのひな祭りの感想には、「お母さんと一緒におひな様を出す」とか「お父さんには早く片付けなくていいと言われた」といった発言が見られるように、娘としての家族との思い出の大切な1ページになっています。


実際に、2012年に株式会社カルピスが行ったひな祭りに関する意識調査の中でも、「家族の絆が強い」と答えた83.1%がひな祭りを祝う予定なのに対し、「絆が強くない」と答えた家庭においては、その半分以下の32.4%が祝う予定ということからも、ひな祭りには家族の絆の強さが見え隠れしていて、俳優の金田賢一さんも、55年毎年飾ってきたひな人形と家族の思い出を次のように語っています。


「“灯(あか)りをつけましょ、ぼんぼりに~” と歌いながら家族3人で飾りつけることはなくなった。それでも、仕事帰りの娘が、ひな人形を見て “おひなさま、出したんだ!” とうれしそうな顔をする。」



もともとは古代中国の厄除けの行事から発展し、豊かな自然からの贈り物になぞらえて娘の幸せを祈るという日本人古来の人生観が受け継がれている「ひな祭り」は、その起源から千年以上たった現在も、ひな祭りの根底にある、子にかける親の思いは変わっていないのかもしれません。


従来、日本人は農業中心の生活をし、四季にも恵まれていたため、季節の変わり目を非常に大切にし、一年のうちにいくつものハレの日を設けては、生活の変化を肌で感じていました。


ひな祭りにも、何千年と引き継がれている「想い」がありますが、それをちょっと意識しながら、ひな祭りをお祝いすることで、また日本の伝統が次の世代に引き継がれていくことになるのです。


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